これから出産を迎える人の中には、産後の生活に不安を感じている人もいるのではないでしょうか。この記事では、助産師がママ本人やパートナーに向けて、産後ケアや産後ケア施設について詳しく説明します。自分たち家族に合ったスタイルを検討して、産後の準備を進めていきましょう。

産後ケアとは?産後ケアって何をするの?


産後ケア
「産後ケア」という言葉を耳にするようになりましたが、一体どういったことをするのでしょうか。まずは「産後ケア」そのものについて説明します。

「産後ケア」とは


産後ケアは、出産で身体に大きなダメージを受けたママと赤ちゃんのお世話のことをいいます。出産はママの身体や心に大きな変化をもたらすため、その後のケアがとても大事です。
ママが必要な休息を取ってゆっくり回復し、元気に過ごせるようにサポートすることが産後ケアの役割です。

「産後ケア」で受けられるサポート内容


産後ケアでは、以下のようなサポートが受けられます。

①ママの身体の回復と健康管理

出産後のママの身体は、体力を消耗している上に、ホルモンバランスが大きく変化していることで全身にあらゆる不調が出やすい状態です。
この時期は、バランスの良い食事や十分な休息をとることが、回復のために何より大切です。
産後ケアでは、食事の提供といった日常生活のサポートだけでなく、栄養バランスや身体を休める方法などのアドバイスを受けることができます。


②赤ちゃんのお世話と育児サポート

産後ケアでは、おむつ交換、沐浴、抱っこや寝かしつけのテクニックなど、基本的な赤ちゃんのお世話についてアドバイスが受けられます。マンツーマンで教えてもらえるので、自分や赤ちゃんの様子に合わせて学ぶことができます。初産婦のママで赤ちゃんのお世話が初めての人でも、安心できますね。これは産後ケアの一番のメリットかもしれません。


③おっぱいのケアと授乳支援

授乳は産後直後から開始しますが、初めからおっぱいが充分に出るという人はほとんどいません。おっぱいのケアと頻回な授乳を繰り返していくうちに、徐々に出るようになっていきます。
産後ケアでは、授乳の正しい姿勢や赤ちゃんへの吸わせ方、乳首のケア方法、必要時には乳房マッサージなどを行うことがあります。また乳房トラブルの予防と対処法についても学べます。


④心理的サポート

出産後は、ホルモンの急激な変化や幼子を見守る生活スタイルに慣れず、ストレスを感じやすいため、マタニティブルーや産後うつに特に注意が必要です。
産後ケアでは、そんなママの心のケアも行います。些細な疑問や不安を口に出すだけでも心が軽くなるものです。産院から帰宅後に自宅で一人で育児をする予定の人は、このようなサポートがとても重要です。


⑤助産師や専門家のアドバイス

助産師や産後ドゥーラなどの専門家から、育児についてさまざまなアドバイスを受けられます。授乳や赤ちゃんの健康管理、成長発達に応じた対処法、事故の防止など、育児においては必要な知識がたくさんあります。疑問があれば専門家に気軽に聞ける体制はとても大切です。


⑥家族やパートナーのサポート

育児は、ママ一人では到底できません。周囲の家族やパートナーの協力がとても大切です。
産後ケアでは必要に応じて、家族やパートナーに対してアドバイスをすることもあります。専門家が入ることで、家族と一緒に赤ちゃんを育てる楽しさや役割分担について話し合うきっかけにもなります。


*助産師からの一言アドバイス*
産後のママの体は、全治2ヶ月の交通事故と同じレベルと言われるほどのダメージを負っています。この時期に無理をすると将来的に身体の不調を長く抱える原因になることも。
育児以外はとにかく休息をとることが、産後の肥立ちのために重要です。


「産後ケア」が必要な理由


産後の悩み
「産後ケア」はなぜ必要なのでしょうか。ここでは、産後のママの状態について詳しくお話します。

■身体はすぐに元に戻らないから


出産は体力的に大きな負担がかかります。子宮や骨盤の回復には約2ヶ月ほどかかり、後陣痛や会陰の痛み、悪露(産後の出血)などで体力を消耗している状態です。
回復のためには、無理をせず育児以外の時間は横になり休息をとることが必要です。

■ホルモンが急激に変化しているから


出産後はホルモンバランスが急激に変化するため、情緒が不安定になることがあります。その上寝不足になると、精神的に悪影響を与えるため注意が必要です。

■すぐに授乳が始まるから


赤ちゃんは生後直後から授乳によって栄養を摂取します。ママも赤ちゃんも初めての授乳なのでうまくいくまでに時間がかかりますし、ママは乳首や乳房の張りなどで痛みを感じることがあります。
また、授乳は1〜3時間おきにすることになるので、ママは産後直後から寝不足になりやすいです。授乳によりママの栄養を赤ちゃんに与えるので、ママは貧血になりやすく、バランスのとれた栄養摂取が重要です。

ママは大忙し!産後直後の育児スケジュール


授乳
出産直後から、赤ちゃんのお世話は朝も夜も関係なくやってきます。ここでは、生後すぐの赤ちゃんのスケジュール例を紹介します。

●頻回授乳とおむつ交換


赤ちゃんの胃は小さいので、一度に沢山飲むことが出来ません。
お腹が空いたらモゾモゾと動き、泣くことで空腹を表現します。その子によって変動がありますが、生後1週間ほどは1〜3時間おきに授乳をします。
授乳の前にはおむつ交換を行い、清潔にしてあげると赤ちゃんも気持ちよく授乳することが出来ます。


●沐浴


生まれたての赤ちゃんはまだ大人と一緒にお風呂に入ることが出来ません。赤ちゃんは沐浴という形で桶やベビーバスを使用して身体を洗います。沐浴の方法は、出産後に産院で教えてもらえます。


●睡眠


生後間もない赤ちゃんはまだ睡眠サイクルが整っていないので、1〜3時間の短時間睡眠を繰り返します。朝と夜の区別もつかないため、夜中に泣くこともあります。
日中起きている間は窓越しに日光浴をさせて優しく声かけをし、たくさん抱っこをしてあげてください。生後1ヶ月くらいかけて、赤ちゃんは体内リズムを整えていきます。


●泣くことによるコミュニケーション


赤ちゃんは泣き声でコミュニケーションをとります。お腹が空いている、眠い、寒い、暑い、おむつが気持ち悪い、抱っこしてほしいなどの感情を、全て泣くことで表現します。
最初はずっと泣いていて困惑することもあると思いますが、そのうちにどうして泣いているのかわかるようになってきます。



産後のママは体力の回復に専念したいものの、赤ちゃんのお世話や頻回授乳で寝る間もないほどに大忙しになります。
入院中は産院が食事を準備しますし、休息したいときには赤ちゃんを預かってもらえます。しかし、1週間もすれば退院して自宅に帰り、全てを自前でしなくてはならなくなります。
これまでもお伝えしたようにママには休息が必要です。そのため、ママは退院後も育児以外は寝ている体制を整え、家事などは周りの家族のサポートが必要です。
「産後ケア」はいるかいらないかといった選択ではなく、全てのママに必要なものとして考えましょう。

*助産師からの一言アドバイス*
近年では核家族化が進み、産後ママやパパだけで育児をしなくてはいけない家庭が増えています。育児は本来一人や二人だけで出来るものではありません。「産後ケア」に加え、可能な限り地域や周りの人の手を借りながら、無理のない育児をしてほしいと思います。


産後ケアには、行政と民間さまざまな形態がある


新生児
では産後ケアにはどういった種類があるのでしょうか?産後ケアと一口に言っても、行政と民間両方でさまざまな型があり、ご自身にあったものを選んでいく必要があります。ここではそれぞれの特徴について紹介します。

産後ケアの種類は主に3つ


産後ケアは行政が行っているものと民間が行っているものがあります。
それぞれで更に大きく3つの型に分けられます。
①宿泊型
②デイサービス型
③アウトリーチ型

それぞれの特徴を見ていきましょう。

【宿泊型】


宿泊型の産後ケアでは、ママと赤ちゃんが施設に滞在してゆっくり過ごすことが出来ます。宿泊型の産後ケアを行っているのは、産院(助産院やクリニック、産婦人科病院など)や専門の施設であることが多いです。それぞれの施設により日にちは多少の違いはありますが、行政が行っている場合、宿泊できる日数は約1週間程度です。

・行政の場合
事前に自治体窓口に申請をして、対象の施設に宿泊します。助成を受けられる場合が多く、費用はお手頃ですが、受け入れ人数や日数が限られていることがあります。

・民間の場合
ご自身の滞在したい期間を予約し、希望するだけの日程で滞在できます。しかし助成などがない場合が多く、費用は施設の設備やサービスによってかなり高額になる場合があります。ママと赤ちゃんだけでなく、家族も一緒に滞在できる産後ケアホテルもあります。


【デイサービス型】


デイサービス型の産後ケアは、日帰りで施設に通いながらママや赤ちゃんのケアを受けるスタイルです。各自治体や民間企業などが指定する産院やホテルを利用します。朝10時頃から夕方15〜17時頃まで滞在し、ママのケア(育児相談やおっぱいチェックなど)や赤ちゃんのお世話(健康チェックやおむつ交換など)を行います。

・行政の場合
事前に自治体窓口に申請をして、デイサービス産後ケアをしている産院に通います。助成が受けられることが多く費用はお手頃ですが、受け入れ人数や通える日数が限られていることがあります。

・民間の場合
産後ケアホテルの日帰り利用などが該当します。施設によってはハーブティなどのドリンクサービスや個室のランチ、岩盤浴やマッサージなど、付帯したサービスが充実しています。費用は施設により異なり、行政のデイサービスよりも高額になる場合があります。


【アウトリーチ型】


アウトリーチ型は、ママの自宅まで専門家が訪問してママや赤ちゃんのケアを受けるスタイルのことを言います。自宅でケアしてもらえるので、体調が優れないママや移動手段のないママには使いやすいサービスです。

・行政の場合
行政が提供する自宅訪問サービスは、産後に全家庭を訪問する乳児家庭全戸訪問事業とは別に、依頼した日に助産師や保健師が自宅に訪問し、育児相談や授乳指導などを受けられるものがあります。訪問回数や時間、補助金額に制約がある点に注意が必要です。

・民間の場合
民間の自宅訪問サービスでは、産後ドゥーラなどが家庭に訪問して、ママと赤ちゃんのケアを支援します。個別のニーズに合わせたケアが希望するだけ受けられる一方で、行政よりは費用がかかる点に注意が必要です。


*助産師からの一言コメント*
<費用の目安>
民間の産後ケアの場合、宿泊型は1泊2〜6万円程度。デイサービス型は1回につき6000円〜2万円程度。アウトリーチ型は、1時間2000〜4000円程度が目安です。
なお、費用はお住まいの地域によっても大きく変動します。
行政の場合は、いずれも民間の約半額程度と考えておくとよいでしょう。助成金によって、もっとリーズナブルに受けられる場合もあります。
産後ケアを利用したい人は、事前申請が必要なため、出産前にお住まいの自治体に問い合わせる(窓口や電話で「産後ケアについて知りたい」と伝える)と良いですよ。
行政だけでは日数やケアが足りないこともあるので、民間の産後ケアも一度検索してみるのがオススメです。


産後ケアのスタイル別「こんな人におすすめ」


産後ケアにさまざまなスタイルがあるのはわかったものの、自分にはどれが合っているのか、産前には決めかねることもありますね。それぞれのメリットとデメリットを紹介しますので、比較して検討してみてください。

①行政の産後ケア宿泊施設


行政が指定する宿泊施設にママと赤ちゃんが約1週間程度入院(滞在)することができます。

メリット:
・費用を一部行政に負担してもらえるためお財布に優しい
・助産師や看護師の専門家のサポートを受けることができる
・出産した施設が行政と連携している場合は入院を延長という形で滞在できる
・産後自宅に帰らないまま産後ケアに移行できる

デメリット:
・受け入れ人数や連携病院など制約がある
・滞在期間が限定されている

*こんな人におすすめ*
・家庭でサポートする人がいない、退院後すぐに一人で育児をしなくてはならない人
・出産後の体力回復を優先させたい、産後はゆっくりしたい人
・専門家のサポートが受けたい人
・同じ時期に出産した人と交流したい人



②行政の産後ケアデイサービス


行政と提携している日帰り施設で、ママと赤ちゃんが数時間専門家のサポートを受けることができます。

メリット:
・助産師や看護師、保育士、栄養士など専門家のアドバイスを受けられる
・宿泊よりも短時間である分、費用が抑えられる(行政が一部補助してくれる)
・家庭でのケアとバランスを取りながら専門家の介入も受けられる

デメリット:
・自宅が遠いなど場所によっては通うのが大変、交通費がかかる
・受け入れ人数や連携施設が少ないなどの制約がある

*こんな人におすすめ*
・家で日常生活を過ごしつつ、専門家のアドバイスもほしい人
・主に母乳のケアを受けたい人
・自宅で家族のサポートをしっかり受けられる人
・同じ時期に出産した人と交流したい人



③行政の産後ヘルパー


行政が提供する自宅訪問のサポートで、自宅でママと赤ちゃんのケアを受けることができます。

メリット:
・家庭で生活しながら家事(洗濯、掃除、食事の準備など)や育児のサポート(沐浴、おむつ変えなど)を受けられる
・忙しい家族へのサポートも受けられる

デメリット:
・訪問回数や時間に制約がある
・希望する日、時間に予約ができないことがある

*こんな人におすすめ*
・自宅で過ごしたいと希望している人
・家事や育児の一部を手伝ってほしい人
・上の子のお世話があって、自宅を離れづらい人
・他の家族の見守りをしなければいけない人(介護など)
・家族のサポートが手薄な人(食事作りや沐浴の手伝いなど)



④産後ケアホテル(宿泊型、デイサービス型)


民間の宿泊施設で、ママと赤ちゃんがくつろぎながらケアを受けることができます。

メリット:
・ホテルのような快適な環境でリラックスできる
・専門のスタッフ(助産師・保育士・栄養士など)がケアを提供し、贅沢な時間を過ごせる
・施設によってドリンクサービスやマッサージなどサービスが充実している
・施設によってはママ同士の交流ができる
・(宿泊型の場合)施設によっては、上の子やパパも一緒に滞在できる

デメリット:
・行政の産後ケアより費用が高い
・都心部には徐々に増えてきているが、地方にはまだ少ない


*こんな人におすすめ*
・予算に余裕があり、産後できるだけ心地よい環境でリフレッシュしたい人
・新生児期の赤ちゃんと思い出になる時間を家族で過ごしたい人
・睡眠不足が特に心配な人
・比較的短期間で仕事に復帰しようと考えている人
・パートナーのサポートが期待できない人
・同じ時期に出産した人と交流したい人



⑤産後ドゥーラ


産後のママと赤ちゃんをケアする専門家=産後ドゥーラが家庭を訪問し、ママと赤ちゃんのサポートをします。

メリット:
・家庭の個別のニーズに合わせたケアを受けられる
・洗濯や食事作りといった家事なども依頼できる
・家庭での赤ちゃんとの過ごし方や危険な場所など具体的なアドバイスが受けられる

デメリット:
・行政よりも費用がかかることが多い
・産後ドゥーラは医療的介入は出来ないため、家事や育児のサポートに限られる


*こんな人におすすめ*
・自宅で過ごしたいと希望している人
・パートナーにもアドバイスしてもらいたい人
・上の子のお世話があって、自宅を離れづらい人
・他の家族の見守りをしなければいけない人(介護など)
・家族のサポートが手薄な人(食事作りや沐浴の手伝いなど)
・日中に自宅で睡眠時間を確保したい人
・長期的にわたって育児のサポートがほしい人



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「産後ケア」は組み合わせて利用するのが◎


家族との話し合い
「産後ケア」は行政のサービスだけで乗り切る、民間の高級なところを使うといった決め方ではなく、複数を組み合わせて自分たち家族にあった形で進めるのがおすすめです。
行政のケアはお手軽な値段でケアを受けられる反面、時間や日数などさまざまな制約があることがあります。一方、民間のサービスは充実したケアが期待できますが、費用の面を考慮する必要があります。選択肢は多く持っていた方がよいので、行政の窓口や電話、自治体や民間のウェブサイトを活用し、自分にあった選択をしてください。

各家庭でもそれぞれサポート体制は全然違います。妊娠中に一度、パートナーや祖父母などとどこまでサポートをお願いできるのか具体的に話し合いましょう。例えば、パートナーが産後パパ育休をとれるのなら、行政の宿泊型に5日、その後に合わせてパパには育休をとってもらい、あとは自宅で産後ドゥーラを依頼というように、家族のスタイルに合わせて、カスタマイズして考えてみてくださいね。

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キッズラインなら産後ドゥーラが多数在籍


行政サービスも利用しつつ、民間のサービスも合わせて活用することで、産後の回復速度は全然違います。
行政サービスは、産後4ヶ月までしか利用できない場合や連続で5日までといった制約が多いです。民間の産後ドゥーラは、希望するときに依頼すればすぐに自宅に来てもらうことができます。良く動くようになり目が離せなくなる頃にも利用できたりと長く寄り添って貰えるのがメリットです。
ベビーシッターや家事代行サービスを展開するキッズラインでは産後ドゥーラも多数在籍しており、赤ちゃんのお世話だけでなくママのケアもしてもらえるのでおすすめです。ご自身やパートナー、家庭環境、予算、不安な点を考慮して、できるだけ快適な産後を迎えるために最適な選択をしてくださいね。


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■フリーランス助産師 上原沙希
東京女子医科大学病院 産婦人科 MFICU に勤務後、より多くの方の力になりたいという思いを抱き、英語力習得のためヨーロッパ留学とギリシャ難民ボランティアへ。その後フリーランス助産師として独立し産婦人科クリニックにてお産介助や妊婦指導などを行う傍ら精神疾患患者や障害をお持ちの患者さんのケアも行う。現在は子持ちフリーランス助産師として産婦人科業務以外にも妊産婦向け商品開発やライター、思春期相談、マタニティヨガ指導、性教育など幅広く活動中。


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