命懸けの出産後、授乳は待ったなしに始まります。「授乳=幸せ」というイメージがありますが、ママの中には「授乳が気持ち悪い」と感じる人もいます。授乳に不快感を覚える症状は、「不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)」といいます。この記事では、助産師が「不快性射入反射」とは何か、その対処法などをお話します。

「授乳が気持ち悪い……」不快に思う人は一定数いる


授乳
赤ちゃんはかわいいし授乳にも前向きに捉えているのに、吸われるたびに「授乳が気持ち悪い」と感じたことがある人は、意外と多くいます。その理由を詳しく説明していきます。

「授乳が気持ち悪い」のは不快性射乳反射によるもの


授乳を始めると、胸がざわざわして授乳や赤ちゃんに対してネガティブな感情を抱いたり、胃がキューっと痛く感じたり、動機や冷や汗をかいて気分が悪くなるといった相談を、ママたちから受けることがあります。
これは、「不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)」といい、近年になってこのような症状を訴える産婦さんが一定数いるということがわかってきました。
最近になって不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)が話題になることも増えてきましたが、それまでは原因不明の症状としてどうしようもないと考えられていました。
普段は不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)を感じない人でも、思い出してみると寝不足の時や体調不良時に不快感があった経験がある方もいるのではないでしょうか。

*助産師から一言アドバイス*
子どもに対してネガティブな感情がわくと、自分自身を責めてしまうママも多いです。でも不快性射乳反射は、ママ自身や赤ちゃんのせいで起きているのではありません。自分だけではなく、他の人も経験しているものだと知ることも大切です。決して自分を責めないでくださいね。


「授乳が気持ち悪い」=不快性射乳反射(D-MER)とは?


授乳が気持ち悪いというのは「不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)」という症状のせいです。では不快性射乳反射とはいったい何なのでしょうか?その仕組みを解説します。

不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)って何?


不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)とは、母乳育児によって起きる射入反射の30〜90秒前に不安や気分不快、胃の不快感、緊張、イライラなどの否定的感情が現れることをいいます。射乳反射の度に不快症状は繰り返されるため、授乳自体が苦痛に感じる人もいます。
正式名称はDysphoric(不快)milk(授乳) ejection(噴出)reflex(反射作用)で、略してD-MAR(ディーマー)と呼ばれます。

不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)の原因


不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)についてはまだ研究段階で詳しいことはわかっていませんが、ドーパミンの一時的な低下が原因ではないかと推測されています。
授乳をするとプロラクチン(乳汁を作るホルモン)やオキシトシン(射乳させるホルモン)が分泌されるのですが、それに伴い脳内のドーパミンが低下します。
ドーパミンは幸せホルモンの一種で、一時的にドーパミンが減ってしまうために不快な症状が起きるのではないかと考えられています。

ママが原因で不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)になることはない


不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)は、まだ解明されていないものの、わかっていることもあります。それは、愛情不足や育て方が悪いから起きるわけではないということです。また、どのような出産だったのかもまったく関係しません。
ですので、不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)の症状があっても、ママは自分自身を責めないでほしいということです。子どもへのマイナスな感情を抱くと、ママ自身もマイナスな感情になってしまいがちです。愛情や育児方法が悪くて起きているわけではないこと、またこのような症状を抱えている人は他にもいることを思い出して、自分を責めないようにしてくださいね。

「授乳が気持ち悪い」症状は、いつ治る?


胸部
授乳の度に不快な症状が出ると、授乳自体をおっくうに感じることもあります。また、いつ頃治るのか知りたい人も多いはずです。不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)はいつ頃治るものなのでしょうか。

不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)が治る時期


不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)が治る時期は、一般的に産後3ヶ月くらいまでと言われているものの、授乳期間中はずっと感じる人もいます。不快な症状が続く時間は90秒ほどで落ち着くことが多く、長くても数分で落ち着きます。
しかし数分で落ち着くと言っても授乳の度に不快な症状が続くのは辛いものです。「授乳をするとしんどくなる」と気にしすぎて、鬱っぽくなる人もいますし、不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)を理由に断乳をする人もいます。

「授乳が気持ち悪い」と感じる時の対処法


不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)についてはわかったものの、症状がある時にはどのような対処をすればよいのでしょうか?具体的に紹介します。

不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)の対処法


不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)に悩む方は以下の4つを試してみましょう。

①自分の症状について分析する

不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)の症状は、人それぞれ持続時間や治る期間が違います。
ご自身の不快症状は授乳を始めて何分後まで続くのか、毎回なのか、空腹時だったり寝不足時だったり、引き金になる事由があるかなどを自己分析するようにしてみてください。
原因やいつまで続くかわからないと、どんどん不安になり症状を悪化させてしまうものです。
☑ 生理的な現象で他の人でも起きていること
☑ 何分くらいで落ち着くか知っておくこと
☑ 産後うつや愛情不足が原因で起きているわけではないこと
などを理解しておくと、少し安心できます。


②最初の数分は授乳から気をそらす

赤ちゃんが乳首に吸い付くと射乳反射が起こり症状が出ます。その瞬間からしばらくは、授乳からできるだけ気をそらすことが大切です。
☑ 好きな音楽を流す
☑ テレビなど映像を観る
☑ アロマなど好きな香りを嗅ぐ
☑ 好きなお菓子を食べたり、好みの飲み物を飲む
☑ 誰かとおしゃべりしながら授乳する
などご自身がリラックスできることをしてみます。授乳に集中せずに気をそらせるようにしましょう。


③ドーパミンを増やす

不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)の原因はドーパミンの低下だと考えられています。そのため、ドーパミンが増えるようなことをすると不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)にもよい効果が期待できます。
ドーパミンは幸せなことを考えたりイメージすることで分泌量がUPします。
「授乳を終えたら好きなお菓子を食べよう」
「明日は〇〇に行って気分転換しよう」
「好きなアイドルの動画を観よう」など
好きなことを思い出してみるようにしてください。


④赤ちゃんと離れる時間を作る

赤ちゃんとずっと一緒にいて自分の時間がないことに、ストレスを感じているママも少なくありません。ご家族に数時間預けるだけでも気分転換になります。もし、預ける人がいない人は、ベビーシッター産後ドゥーラなどを利用するのもよいですね。


*助産師から一言アドバイス*
何より大切なことは、ママ自身がストレスをためないようにすることです。
自分の他にも同じ思いを抱えている人がいることや、楽しいことをイメージすること、そして一人で抱え込まずに誰かに打ち明けたり相談するのもよいですね。
お近くにいる助産師に相談するのも一つの手です。一人一人に合った授乳方法をアドバイスしてくれるはずですよ。


今すぐベビーシッターを依頼してみる

育児ストレスをためないように周囲に頼って


家族
新生児を抱えるママは急激なホルモンバランスの変化や寝不足が重なって、特に忙しくなくてもイライラしたり、涙が出てくることもあります。
「ずっと家にいてのんびりさせてもらっているのに」と自分を責めるのではなく、最大限周囲のサポートを頼ってストレスをためない生活を心がけてください。
時には赤ちゃんを預けて外出も必要です。預ける人がいないなら、ベビーシッターに依頼して、ママの心の健康にも気をつけるようにしてくださいね。

キッズラインなら、スマホでベビーシッターを探せる


ベビーシッターや家事代行サポーターを探せるキッズラインなら、ママと赤ちゃんの生活を支えてくれる産後ドゥーラや、0ヶ月の赤ちゃんを見られるベビーシッターを、スマホで気軽に探すことが出来ます。
ベビーシッターを初めて依頼する際には、顔合わせまたは事前面談が必要なので、まずは利用登録をして、検討している方に連絡を取ってみるのがオススメです。
赤ちゃんとの生活を支えてくれる心強いサポーターと“子育てのチーム”を作って、みんなで子育てする環境をつくっていきましょう。

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■フリーランス助産師 上原沙希
東京女子医科大学病院 産婦人科 MFICU に勤務後、より多くの方の力になりたいという思いを抱き、英語力習得のためヨーロッパ留学とギリシャ難民ボランティアへ。その後フリーランス助産師として独立し産婦人科クリニックにてお産介助や妊婦指導などを行う傍ら精神疾患患者や障害をお持ちの患者さんのケアも行う。現在は子持ちフリーランス助産師として産婦人科業務以外にも妊産婦向け商品開発やライター、思春期相談、マタニティヨガ指導、性教育など幅広く活動中。


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